[90] 生気を失った老紳士を救え! 【事件編】2

 

 

紹介状には、こう書かれていた――。

 


「先月、Aさんは腹部の大動脈の大手術を受けたのだが、

手術をきっかけに全く気力を失い、食事も受け付けなくなってしまった。

 

一旦は退院したのだが、数日の内に脱水状態で再入院となってしまった。
再入院の間も、本人は身体のだるさを理由に、自発的に動くこともできなかった。


ただ、入院も3週間となり、ご本人、ご家族の希望もあって退院することになった。

ついては地域で往診医もされているホームズ君に、退院後の往診をお願いしたい」



読み終えるとホームズ君は、奥さんに向かって「お困りでしょう。よく分かりました。往診に伺って様子を拝見しましょう」と声をかけた。

その返答に二人とも、安堵の笑顔を見せた。



「よろしくお願いします」という声にも、心なしか明るさが蘇ったような響きを感じる。



往診の段取りを相談した後、帰ってゆく二人の後姿は、来た時よりも精気を回復したように見え、歩き方も軽やかに思えた。



ただ、ホームズ君は表情を緩めることはなかった。
「ワトソン君、これは難事件かもしれないよ」と、ワトソン君の方に向き直って声をかけたのだった。



「と、いうと?」


「うん。実際のところは、Aさんに会ってみないと何とも言えないのだけれどね……。

入院と大手術、その後長引く倦怠感と食欲低下……そして脱水。と考えると、ただ単に食べられないというよりも――」

 


そこまで言うとホームズ君は、時間の遅れを取り戻すように、ワトソン君に話を打ち切る合図をして、

次に待つ相談者の名前を呼び、応接室に招き入れたのだった。

 



さて翌日の午後、ホームズ君はAさんを訪ねていた。

Aさんのお宅は以前、農作業の疲れで寝こんでしまった娘さんを往診したことがあり、道順もよく知っていた。



玄関に出迎えた奥さんに奥の寝室を案内され、そこでベッドに横になっているAさんと出会った。


Aさんは蒼白く、少し眼の周りが腫れぼったく浮腫(むく)んで見えた。


「こんにちは、Aさん、いかがですか」というホームズ君の声に

「あまり、調子はよくないんです」と応えるAさんの声はかすれていて聞こえにくく、瞳も精気を失って見えた。



さあ、Aさんの体力回復のために、ホームズ君は現状をどう理解し、どう解決に導いていくのだろうか。
次号での進展を楽しみにして頂きたい。

 


[解決編につづく]

 

 

ますむら医院 院長・増村道雄

 

 

 

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