シネマの時間

 

河瀬監督の珠玉のラブストーリー

 

「光」

 

 

 

  ©2017 “RADIANCE”FILM PARTNERS KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

■監督/河瀬直美

■出演/永瀬正敏、水崎綾女

■神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸、梅田ブルク7、なんばパークスシネマほかで、5月27日から 

 

 15年に佳作『あん』を放った河瀬直美監督と永瀬正敏が再び顔を合わせ、

今度はラブストーリーに挑んだ注目作。

 

 視覚障碍の人の映画鑑賞を助ける「音声ガイド」を作成する美佐子は、

モニター会で厳しい意見を言う雅哉に初め反発を覚えるが、

かつて天才と言われたカメラマンだった彼の夕日の写真に心惹かれ、

やがて彼の苦悩を知っていく・・・。

 

 諍いから次第に寄り添っていく王道的流れながら、

一本の映画に音声ガイドを付ける工程を軸にした展開がよく、

また対象との距離を縮めて視えるものは大きめに、

視える範囲は狭めた映像は、視覚障碍をより身近に感じさせることに成功している。

 

 さらにシーンによっては、ある方向にカメラを向けることを徹底的に避けて、

観客が期待するものを敢えて視せない手法も、結果的に観客と登場人物との

一体感を強めることに奏効している。

 

 こういうところに、『あん』以降、映画の観せ方により心を配るようになった

河瀬監督の姿勢が感じられる。

 

 主演の永瀬正敏、相手役の水崎綾女も好演。

そして、『あん』で永瀬と共に主演した樹木希林の声が、極め付けのシーンで流れる演出も心憎い。

 

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映画評論家:春岡勇二(はるおか・ゆうじ)

 

1958年島根県出雲市生まれ。

大阪芸術大学卒業後、82年情報誌「プレイガイドジャーナル」に参加。

映画担当となり、後に副編集長を兼任する。

87年フリーとなり、以降は関西在住の映画評論家として活動。朝日新聞連載、

よみうりテレビ「シネマダイスキ」解説等の仕事を経て、現在はキネマ旬報ベストテン、

毎日映画コンクール選考委員のほか、京都学園大学、ビジュアルアーツ専門学校で講師も務める。